千葉に住んでいたら今の稲毛海岸や海浜幕張あたりが埋立地だということはよく知っている。
昔は国道14号あたりから先は海だったというのは常識と言っていい。とはいえ何となくの知識でしかなく、いつ頃埋め立てたのかも以前の風景がどうだったのかも想像したことすらなかった。
その埋め立てる以前の風景を教えてくれるのが旧神谷伝兵衛稲毛別荘。
千葉市稲毛にある国の登録有形文化財に指定されている洋館で、以前から見に行きたいなと思っていた建物。平成30年6月から施工されていた耐震補強工事が完了し、令和2年3月より公開が再開されたのを機に見学してきた。
以前は海辺の別荘だった
今の景色からは到底想像できないが稲毛は海辺の保養地だった。
旧神谷伝兵衛稲毛別荘も保養地の別荘として建てられた。きっと海を見ながらのんびりと過ごせたのだろう。
でも今は別荘から海は見えない。海まで約3kmある。海辺から別荘が移築されたわけではない。海が遠くに行ってしまったのだ。
つまり海辺の保養地として建てたつもりが海が埋め立てられしまい今では内陸になったということ。オーシャンビューのリゾートマンションを購入したけど目の前に新たにマンションが建って海が見えなくなったみたいな残念感がある。実際は埋め立てだからなおのこと辛い。海まですぐだったはずが今では約3km。
もし今でも別荘として使ってたとしたらと考えると何とも悲しい。
葡萄愛
建物は大正7年(1918年)に建てられた鉄筋コンクリート造。地上2階地下1階。白系のタイルが貼られ、ファサードはベランダの5連アーチに目が行く。直線だけでなく、2階の半円型に張り出した出窓のような場所や階段、そして丸窓など、曲線部分も印象的だ。鉄筋コンクリート造ということも含め当時の建物としはかなりオシャレだったんじゃないだろうか。
1階は洋室、2階は和室というつくり。ベランダや2階から見る眺めはきれいだったんだろうなぁと想像できる。
この建物を建てた神谷伝兵衛は「日本のワイン王」とも言われた明治の実業家。日本最初のバーである神谷バーは今でも浅草にあるし、牛久にあるワイン醸造場のシャトーカミヤは牛久シャトーと名前を変え今も建物が残る。ワインやお酒好きであれば知っている人もいるかもしれない。
そんな神谷伝兵衛が建てた建物らしく、この別荘にはいろいろな場所に葡萄に関する装飾が見られる。それを探すのもこの別荘を見学する楽しみのひとつ。
いずれは牛久にも
神谷伝兵衛関連の建物といえば浅草の神谷バーと牛久の牛久シャトー。
今回、旧神谷伝兵衛稲毛別荘に訪れたことで他の2つにも興味を持った。特に牛久シャトーは国の重要文化財にも指定されているので近いうちに行ってみたい
一つのことから次のものへと興味が広がる感じはとてもいい。これを途切れさせないように広げていこう。
"旧神谷伝兵衛稲毛別荘"
「日本のワイン王」神谷伝兵衛の別荘として建てられた洋館。
地上2階地下1階の鉄筋コンクリート造。
千葉県千葉市稲毛区稲毛1-8-35【map】
公式サイト:ギャラリー・いなげ|公式